猫の口内炎は、人間の口内炎とは異なり治りにくい特徴があります。特に「慢性歯肉口内炎」と呼ばれるタイプは、猫がご飯をまともに食べられなくなるほど強い痛みを伴い、体全体の調子を崩してしまうケースも少なくありません。従来の治療法ではなかなか症状が改善しないことがあり、飼い主様もどうしたら良いのか悩まれることが多い病気です。
そこで、最近では再生医療による治療が注目されています。今回は猫の口内炎について、その原因や治療法の選択肢に焦点を当ててご説明します。
◼️目次
1.猫の口内炎について
2.主な症状
3.一般的な診断法と従来の治療
4.再生医療による治療
5.日常生活でのケア
6.まとめ
猫の口内炎の中でも特に問題視されるのが「慢性歯肉口内炎」です。はっきりとした原因は解明されていませんが、以下のような要因が複雑に絡んでいるのではないかと考えられています。
・ウイルス感染(猫カリシウイルス、猫免疫不全ウイルスなど)
・歯周病
・アレルギー反応
これらが引き金となり、猫の免疫システムが過剰に働いてしまい、口の中(歯ぐきや粘膜)で炎症や強い痛みを引き起こすと考えられています。
慢性という言葉が示すように、炎症が長期にわたって続き、治療をしても再発を繰り返すケースが多いのが特徴です。どの種類の猫でも発症する可能性はありますが、ワクチンを接種していなかったり、歯周病やアレルギーなどの持病をもっていたりする猫はリスクが高いといえます。
口内炎の猫には、以下のような症状が現れます。
〈初期段階〉
・口周りに触られるのを嫌がる
・口臭が強くなる
・よだれが増える
・グルーミングの回数が減る
〈症状が進んだ段階〉
・体重が減って、ぐったりする
・じっとして動かないことが増える
口内炎になると口の中に強い痛みを感じるため、特に食事に影響を及ぼします。咀嚼時の痛みから、食欲があってもフードを食べるのをためらうようになり、次第に栄養が不足して全身の状態が悪化してしまいます。
猫の口内炎を診断するには、問診、口腔内検査、血液検査を行います。問診では症状の経過だけでなく、ワクチン接種歴や持病の有無などもお聞きします。その他の口腔内の病気(歯周病や腫瘍など)も口内炎と似たような症状が現れるので、慎重に判断します。
<従来の治療方法>
一般的には、次のような治療の選択肢があります。
・抗炎症薬・抗生物質
痛みや炎症を抑える薬で一時的に症状が和らぐことがあります。しかし、根本原因(ウイルス・免疫異常など)の解決にはつながりにくいため、薬をやめるとすぐに再発することが多いです。
・歯科治療
現在、もっとも効果的とされるのが抜歯処置です。特に奥歯(臼歯)をすべて抜く、または全ての歯を抜くことで、口腔内の刺激を減らし炎症が落ち着くケースがあります。ただし、猫に対する大きな手術負担がかかるうえ、抜歯後も必ず良くなるわけではありません。
猫の口内炎に対する新しい治療法として、最近では再生医療が注目されています。この病気は免疫の異常によって起こるので、再生医療の中でも「間葉系幹細胞(MSC)療法」が適用されます。MSCは、過剰な免疫反応を制御するだけでなく、炎症で傷んだ細胞や組織を保護・修復する可能性があるため、従来の薬物療法や抜歯とは全く異なる「根本的な改善」を目指せる点で注目されています。
〈治療の流れ〉
具体的な手順は、自己移植か他家移植かによって異なりますが、一般的には次のような流れです。
1.幹細胞の採取または準備
自己脂肪組織からMSCを培養する、もしくは他家由来(別の健康な猫)のMSCを利用します。
2.投与(注射または点滴)
点滴で静脈内に投与、場合によっては患部に直接注入します。2週間間隔で2〜3回行うことが多く、症状改善の度合いを観察します。
3.経過観察・必要に応じた追加投与
投与後は炎症・痛みの軽減具合を見て、再度投与を検討します。
猫の口内炎は「なかなか完治しない」「再発しやすい」病気です。再生医療や従来の治療を行うにしても、日頃のケアがとても重要になります。
・口腔ケア
口内炎を防いだり、進行を遅らせたりするには歯周病対策が欠かせません。歯磨きに慣れていない猫だと難易度が高いこともありますが、少しずつ慣れさせることで歯茎や歯周ポケットの清潔を保てます。
・食事の工夫
食事は総合栄養食を選び、痛みがひどいときはやわらかいウェットフードに切り替えるなどの工夫が必要です。
・環境管理
寝床や毛布、クッションなどはこまめに洗い、清潔な環境を維持しましょう。また、ストレスが過度にかからないよう、飼育環境を整えることも大切です。
さらにこうした自宅でのケアとあわせて、定期的に動物病院を受診し、健康状態をチェックすることも重要です。
猫の口内炎は長期にわたることが多く、その痛みはQOLの低下にもつながります。そのため、早期発見・早期治療がとても重要な病気です。今回ご紹介したような症状がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう。また、治療の選択肢はいくつかありますが、根本的な解決につながらないこともあります。当院では新しい治療法である再生医療を取り入れているので、長引く口内炎でお悩みの際はお気軽にご相談ください。
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