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ペットの慢性疾患に希望の光を!|間葉系幹細胞(MSC)療法について

これまでの記事では、ペットのがん治療に役立つ「免疫細胞療法」について詳しくご紹介してきました。ただ、再生医療はそれだけではありません。当院では、慢性疾患の治療をサポートする「間葉系幹細胞(MSC)療法」も取り入れています。この治療法は、炎症を和らげ、ペットがより快適に生活できるようサポートするものです。

まずは間葉系幹細胞(MSC)療法がどういったものなのかをご説明したうえで、その手順や、効果が期待できる病気についてもご紹介します。

◼️目次
1.間葉系幹細胞(MSC)療法とは?
2.他の再生医療とは異なる移植が必要?
3.MSC療法で治療効果が認められた病気
4.どのように治療するの?
5.副作用やリスク
6.まとめ

 

間葉系幹細胞(MSC)療法とは?


間葉系幹細胞(MSC)療法は、再生医療の一つです。同じ再生医療に分類される「免疫細胞療法」はがん治療に効果が期待されますが、MSC療法は「慢性疾患」に対する効果が期待できます。
再生医療が何か詳しく知りたい方はこちら

慢性疾患とは、長い間、炎症や体の不調が続く病気のことです。例えば、犬や猫の場合、慢性腎臓病、関節炎、慢性口内炎などが挙げられます。これらの病気は完治が難しいことが多く、痛みを和らげたり進行を遅らせたりする治療が中心です。しかし、薬が効かなくなったり、副作用で元気がなくなるケースもあり、飼い主様が治療方針に悩むことも少なくありません。当院では、そのような悩みを抱える飼い主様に、新たな選択肢としてMSC療法をご提案しています。
再生医療と慢性疾患について知りたい方はこちら

MSC療法では、ペットの体にある「間葉系幹細胞(MSC)」を活用します。これは動物の脂肪や骨髄などに含まれる特別な細胞で、骨や軟骨、脂肪細胞など間葉系と呼ばれる細胞に変わる力をもっています。しかしそれだけではなく、間葉系幹細胞には体の炎症反応を鎮める物質(抗炎症物質)や炎症などから他の細胞を守る物質(細胞保護物質)をバランスよく分泌する機能が備わっています

そのため、MSC療法によって体の中にこの細胞を取り入れると、炎症が落ち着き、傷んだ組織が修復しやすくなります。これにより、愛犬や愛猫がより快適に生活できるようになり、生活の質(QOL)の向上が期待できます。

 

他の再生医療とは異なる移植が必要?


MSC療法では、治療に使用する間葉系幹細胞を以下の2つの方法で得ることができます。

自家移植
ペット自身の間葉系幹細胞を使います。自分の細胞を使うため、拒絶反応のリスクが低く、安全性が高い点が特徴です。ただし、細胞を採取して培養するために、2〜3週間の時間がかかります

他家移植
健康な別の犬や猫から提供されたMSC幹細胞を使用します。この細胞は、あらかじめ凍結保存しておいた間葉系幹細胞を解凍してそのまま、あるいは1週間ほど培養してから使用するので、より早く治療にとりかかれます。

どちらの治療が適しているかは、ペットの健康状態をチェックしてから判断します。

 

MSC療法で治療効果が認められた病気


MSC療法は、以下のような病気で効果が認められています。

犬の場合
・椎間板ヘルニアなどの脊椎損傷
・慢性腎臓病
・炎症性腸疾患
・関節リウマチや多発性関節炎などの関節疾患
・肝硬変

猫の場合
・脊椎損傷
・慢性腎臓病
・慢性口内炎

 

どのように治療するの?


自家移植の場合
ペットの皮下脂肪を、局所麻酔(場合によっては全身麻酔)でピンポン玉ほど採取します。その脂肪を酵素によってバラバラにした後、2~3週間ほどかけて間葉系幹細胞を培養します。その後、培養した間葉系幹細胞を、患部に直接注射、または点滴で体内に投与します。この治療を2週間ごとに2~3回繰り返します。

その後、回復の程度などを確認して、継続するかどうかを判断します。

他家移植の場合
避妊手術などで取り除いた脂肪を利用します。その際、飼い主様に使用の許可をいただきます。脂肪は、自家移植の場合と同様に酵素で処理した後、培養し、増えた間葉系幹細胞を凍結保存しておきます。MSC療法による治療時には、凍結保存しておいた間葉系幹細胞を解凍してそのまま、あるいは1週間ほど培養した後、直接患部に注入するか、点滴によって静脈内に投与します。

 

副作用やリスク


今のところ副作用は報告されていませんが、大量の間葉系幹細胞を一度に静脈へ注入すると、肺などで詰まりが起こる可能性があります。そのため、決まった量(体重1kgあたり100万個以下)を、時間をかけて点滴で投与します。

また、他家移植の場合、同じドナー(細胞を提供する犬・猫)の細胞を繰り返し使うと、体が細胞を異物としてとらえ壊してしまう「拒絶反応」が起こる場合があります。これによって治療効果が下がることも考えられます。

 

まとめ


MSC療法は、再生医療の一つとして、抗炎症作用や細胞保護作用を利用した新しい治療法です。これまでの薬だけでは効果が出にくかった慢性疾患に対しても、新たな可能性をひらきます。慢性疾患の治療にお困りの際は、ぜひ当院にご相談ください。慢性疾患の治療でお悩みの際は、ぜひ当院までご相談ください。

 

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愛知県碧南市の動物病院「へきなん動物病院」
TEL:0566-41-1128

 

<参考文献>
https://doi.org/10.1186/s13287-022-03076-8 (El Miniawy H.M. et al. Stem Cell Research and Therapy 13:387, 2022)
https://doi.org/10.3390/ani11072061 (Cristóbal J.I. et al. Animals 11, 2061, 2021)
https://doi.org/10.1177/1098612X15576980 (Quimby J.M. et al. Journal of Feline Medicine and Surgery 18, 165–171, 2016)
https://doi.org/10.1177/1098612X14561105 (Webb T.L. and Webb C.B. Journal of Feline Medicine and Surgery 17, 901–908, 2015)
https://doi.org/10.1186/s13287-020-01623-9 (Arzi B. et al. Stem Cell Research & Therapy 11, 115, 2020)

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