愛犬や愛猫ががんと診断されたとき、「治らないと言われてしまった」「抗がん剤が効かない」「副作用が心配」といった飼い主様の声をよく耳にします。がんは治療が難しいものが多く、現代の獣医療でも飼い主様とペットの双方が満足できる治療法は限られています。
「もっと違う治療方法があればいいのにな」と考えてしまう中で、従来の治療法とはまったく違った仕組みで病気を治す手助けをする再生医療は、こうしたお悩みを解決できるかもしれません。
今回は、愛犬・愛猫ががんなどの病気にかかってお悩みの飼い主様に向けて、再生医療に関する情報をお届けします。
◼️目次
1.がん（悪性腫瘍）と再生医療
2.よく悩まれる病気と再生医療
3.まとめ
がんは、高齢になってから発生することが多く、体にさまざまな悪影響を及ぼす病気です。
基本的には手術や抗がん剤、分子標的薬(がん細胞など特定の異常な細胞を攻撃するために、その細胞に特有の分子を狙って作用する薬)による治療が行われますが、抗がん剤が効きにくい場合や再発リスクが高いケースもあります。
また、抗がん剤や分子標的薬はさまざまな副作用が現れてしまうので、愛犬・愛猫の老後を考えると治療に躊躇する飼い主様も少なくありません。こうしたご不安に対し、当院でお勧めする治療法が「再生医療」です。
再生医療の一つである「免疫細胞療法」は副作用がほとんどなく、抗がん剤の代わりとしても注目されています。大きながんや進行の早いがんを取り除くことはできませんが、患者の血液から免疫細胞（体に害を及ぼす物質を排除する細胞）を取り出し、免疫細胞を元気にして増やした後、再び患者の体内に戻すことでがんを排除する免疫機能を高め、手術後の転移や再発を防ぐことが期待できます。
免疫細胞療法について詳しくはこちらをご覧ください
また、再生医療は体への負担が少ないため、高齢で持病を抱えるペットにも利用できることが大きなメリットです。
免疫細胞療法が特に注目されるがんの種類として、以下のものがあります。
犬の口の中にできることが多いがんです。
基本的には手術が必要ですが、がんの大きさによっては顎の大部分を取り除く必要があるので、愛犬のQOL（生活の質）を損なう原因となります。さらに、抗がん剤が効きにくく、肺やリンパ節に転移した場合、治療が難しくなります。
犬、猫ともに高齢のメスに多く見られるがんです。
基本的には手術が必要ですが、乳腺腫瘍の場合は左右どちらかまたは全ての乳腺を取ることが多く、ペットへの負担が大きくなります。
また、炎症性乳がんと呼ばれる状態では手術によって逆に痛みや炎症が増してしまうので、皮膚の軟膏などによる対症療法がメインになります。さらに抗がん剤が効きにくいため、リンパ節に転移してしまった場合は、治療が難しくなります。
犬の肝臓や脾臓にできる非常に悪性度の高いがんです。
手術と抗がん剤を組み合わせて治療しますが、再発や転移が多く、長い生存は期待できないといわれています。
大型犬の手足の骨によく発生するがんで、痛みが激しいことが特徴です。
一般的には手術（断脚術）が適応されますが、手足を1本丸ごと取り除く必要があり、その後のQOLに大きく影響します。
また、肺や他の骨に転移することが多いため、抗がん剤治療をあわせて実施することが多いですが、骨髄に対する副作用がみられます。
犬に多く見られる皮膚の腫瘍で、稀に内臓にも発生します。
抗がん剤が効きにくいため、基本的には手術と分子標的薬（トセラニブやイマチニブなど）を組み合わせて治療しますが、嘔吐や下痢などの消化器症状や間質性肺炎といった強い副作用が現れます。
こうしたがんに対して、再生医療（免疫細胞療法）は効果を発揮するため、当院では治療の選択肢の1つとしてご提案しています。
犬や猫の高齢化が進み、がん治療に悩む飼い主様が増えています。従来の治療法では有効なものがなかったり、副作用が現れたりするため、治療に踏み切れない飼い主様も多くいらっしゃいます。しかし、「少しでも愛犬・愛猫の力になってあげたい」と願う飼い主様も多いはずです。
再生医療は、今までの方法では治せない病気でも、症状を和らげる手助けができるかもしれません。当院では再生医療の実績や経験が豊富ですので、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
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