再生医療という治療法をご存じでしょうか?近年、人間の医療だけでなく、動物の医療でも注目されている新しい治療法です。
まず、「再生医療」という言葉の意味を考えてみましょう。「再生」という言葉には、「傷ついたり、衰えたりした細胞や臓器を元の状態に戻すこと」という意味があります。
つまり、再生医療とは、「医学、獣医学、生物学の知識と技術を使って、細胞や臓器がそのままでは働かない状態から、再び働く状態にする治療法」を言います。
再生医療と聞くと、「再生医療=iPS細胞」と思われる方も多いかもしれませんが、厳密には少し違います。iPS細胞は、体のあらゆる臓器の細胞になる能力を持ち、「体の一部を復活させる」ことを目指し、「体の治る力を手助けする」ことを目的とする再生医療の中の1つの方法です。
最近では、犬や猫のiPS細胞も作られるようになりましたが、iPS細胞を実際の医療や獣医療に応用するにはまだ多くの研究を重ねる必要があります。
この記事では、「ペットの未来を変える再生医療」について、その特徴をわかりやすく解説します。
再生医療は、これまでの薬や手術とはまったく違った治療法なので、「何が優れているの?」「いったいどんな治療なの?」などの疑問をお持ちの飼い主様も多くいらっしゃると思いますので、疑問点の解消の手助けとなれば幸いです。
◼️目次
1.再生医療は「何が優れているの?」
2.ペットの再生医療とは、「いったいどんな治療なの?」
3.まとめ
再生医療の最も優れている点は、身体にほとんど負担をかけることなく症状の改善につなげられる可能性があることです。
その他、再生医療には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
ペットの再生医療には、「免疫細胞療法」と「間葉系幹細胞療法」があります。
患者の血液から免疫細胞(体に害を及ぼす物質を排除する細胞)を取り出し、元気にして増やした後、再び患者の体内に戻すことで免疫機能を高める治療法です。
がん細胞は体に害を及ぼしますが、この治療法によってがんの成長を抑え、再発や転移を防ぐことが期待できます。
また、ペットのQOL(生活の質)を改善できるという特徴があります。
免疫細胞療法には、活性化リンパ球療法、キラー細胞療法、樹状細胞療法の3種類があります。
血液中の免疫細胞の1つであるリンパ球を体外で活性化因子によって活性化リンパ球にした後、再び患者の体内に戻す治療法です。
血液中の免疫細胞の1つであるナチュラルキラー細胞を活性化して、がん細胞を攻撃する能力の高いキラー細胞にした後、再び患者の体内に戻す治療法です。
血液中の単球から樹状細胞を作り出し、がん抗原を提示する(がん細胞の目印を教える)ことで体内のリンパ球を活性化し、がん細胞を攻撃する治療法です。
間葉系幹細胞を傷ついた臓器に入れて、新しい細胞を作り出して臓器の修復を助ける治療法です。
この治療法は、薬が効かない病気や手術で治せない病気にも効果があります。
犬では椎間板ヘルニアや慢性腎臓病、関節疾患、炎症性腸疾患など、猫では脊髄損傷や慢性腎臓病などに対して適応されます。
再生医療は、ペットたちに新たな可能性をもたらす治療法です。従来の方法では難しかった症状の改善や、ペットの生活の質を高める効果が期待できます。
特に、がんや慢性疾患と闘うペットたちにとって、体への負担が少なく、長期的な効果が見込める再生医療は、大きな希望となるかもしれません。
ただし、再生医療はまだ発展途上の分野です。全ての病気に適用できるわけではなく、個々のケースに応じた専門的な判断が必要です。
そこで、へきなん動物病院では、再生医療に関する最新の知識と経験を持つ獣医師が、あなたのペットに最適な治療法をご提案します。「うちの子に合うのかな」という疑問や不安があれば、ぜひ一度ご相談ください。
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再生医療とは
再生療法(免疫療法)
愛知県碧南市の動物病院「へきなん動物病院」
TEL:0566-41-1128
<参考文献>
犬や猫の犬や猫のiPS細胞について:研究|細胞病態学教室|大阪公立大学 (omu.ac.jp
JSVRM | 一般社団法人日本獣医再生医療学会 公式サイト