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愛犬の椎間板ヘルニアでお悩みの方へ|治療選択と再生医療の効果

犬に多い神経の病気として、椎間板ヘルニアが挙げられます。この病気は、首や背中に痛みがみられるだけでなく、手足が麻痺してしまうこともあるので、ご心配される飼い主様もたくさんいらっしゃいます。また、「うちの犬にはどんな治療法がいいんですか?」「手術とリハビリで歩けるようになるんですか?」など、治療法やその後のケアについてのお悩みもよくうかがいます。

今回は、椎間板ヘルニアの治療法に焦点を当ててご説明しながら、その中で脊髄損傷(椎体骨折など)との関連性についても触れたいと思います。従来の治療法だけでなく、新たな治療法として再生医療が注目されていますので、こうした選択肢もあるということを知っていただければ幸いです。

◼️目次
1.椎間板ヘルニアとは
2.椎間板ヘルニアの発症原因
3.主な症状と診断
4.一般的な治療法
5.再生医療による新しいアプローチ
6.治療後の経過と管理
7.予防法と日常ケア
8.まとめ

 

椎間板ヘルニアとは


椎間板ヘルニアは、椎間板の構造物が逸脱または突出し、脊髄を圧迫することで起こる代表的な脊髄疾患の一つです。特に頸部や胸腰部で発症しやすく、犬の神経症状の原因としてよくみられます。

椎間板ヘルニアで見られる主な徴候には、激しい痛み(首や背中)、後肢の運動失調、不全麻痺などが挙げられますが、これらの症状は逸脱した椎間板によって脊髄が物理的に圧迫されて生じる炎症や浮腫、さらに脊髄損傷が引き起こす神経症状が大きく関わっています。

また、椎体骨折といった他の脊髄損傷でも似たような症状が現れることがあるため、精密検査による診断が欠かせません。

 

椎間板ヘルニアの発症原因


椎間板ヘルニアは、その発症原因によって大きく2種類に分かれます。

・ハンセンⅠ型
ミニチュア・ダックスフンドなどの犬種で遺伝的に多く、若いころから急に起こります。髄核(椎間板の中央部)が急激に飛び出すことで、強い圧迫や症状がみられるケースが多いです。

・ハンセンⅡ型
加齢によって椎間板が慢性的に変性し、少しずつ突出するタイプです。どんな犬種でも発症する可能性があり、中〜高齢の犬でよくみられます。

 

主な症状と診断


椎間板ヘルニアは、その症状の進行度合い(グレード)によって段階的に分類されます。

◾️頸部(首)の場合

グレード 症状
I 首の痛みがありますが、手足の麻痺やふらつきはみられません。頭を上げられなくなり、首に触ろうとすると「ウー!」と怒ることもあります。
II 首の痛みに加えて、手足(特に前足)の麻痺が現れ始め、力が入りにくくなります。
III 立ち上がれず、寝たきりになります。

 

◾️胸腰部(背中や腰)の場合

グレード 症状
I 背中や腰に痛みがありますが、手足の麻痺やふらつきはみられません。「キャン」と鳴いたり、震えたりすることがあります。
II 背中や腰の痛みに加えて、手足(特に後ろ足)の麻痺が現れ始め、力が入りにくくなります。立ったり歩いたりすることはできます。
III 踏ん張りがきかず、歩けなくなります。
IV 寝たきりの状態になり、自力でのおしっこも難しくなります。
V グレード4に加え、痛みを感じなくなります(深部痛覚の消失)。

 

診断には神経学的検査や画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)が必要です。脊髄のどの部分が圧迫されているか、あるいは脊髄がどの程度損傷しているかを正確に把握することで、最適な治療方針を立てることができます。

 

一般的な治療法


椎間板ヘルニアの治療法は、進行具合によっても異なりますが、一般的には次のような選択肢があります。

・保存療法
安静と内科的治療(痛み止めやステロイドなど)を主軸に、症状の進行を抑えながら痛みの緩和を図ります。外科的処置を行わないため身体への負担が少ない一方で、圧迫の原因となる椎間板を直接取り除くわけではないため、重度の神経症状に対しては十分な効果が得られない場合もあります。

・手術療法
椎間板を部分的または完全に切除し、脊髄への圧迫を取り除くことで根本的な改善を目指す方法です。圧迫解除の効果が期待できるぶん、外科手術のリスクや全身麻酔の負担、さらに術後も麻痺が残る可能性や再発のリスクがある点には注意が必要です。

・リハビリテーション
手術を受けた場合、リハビリテーションは欠かせません。また、保存療法を選択したケースでも、症状の進行を防ぎつつ機能の低下を最小限に抑えるためにはリハビリが大変重要になります。重度の麻痺が続く場合は、長期にわたって根気よくリハビリに取り組むことが必要となるでしょう。

 

再生医療による新しいアプローチ


近年、犬の椎間板ヘルニアやその他の脊髄損傷(椎体骨折など)に対して注目されているのが、再生医療です。なかでも間葉系幹細胞(MSC)療法は、患者自身の体内にある自然治癒力を高めることで、炎症を抑え、損傷した神経組織の修復を促す方法として期待されています。椎間板や脊椎の構造を直接修復するわけではありませんが、抗炎症作用や組織保護作用によって神経が回復しやすい環境を整えていくのです。

実際の治療例

たとえば、椎体骨折が原因の脊髄損傷に対してMSC療法を行った症例では、椎体骨折を治療する手術を受けた後でも起立が困難でした(左)。しかし、MSC治療後には、抗炎症作用や組織保護作用によって損傷した脊髄神経が回復し、歩行できるようになったケースがあります(右)。

治療の流れ

具体的な手順は、移植方法によっても多少異なりますが、一般的には次のような流れです。

1.幹細胞の採取または準備
自己脂肪組織からMSCを培養する、もしくは別の健康な犬・猫のMSCを利用します。

2.投与(注射または点滴)
点滴で静脈内に投与、場合によっては患部に直接注入します。2週間間隔で2〜3回行うことが多く、症状改善の度合いを観察します。

3.経過観察・必要に応じた追加投与
脊髄の状態を見て、再度投与を検討します。

 

治療後の経過と管理


どんな治療法を選択したとしても、治療後のリハビリテーションが欠かせません。回復の程度に合わせて少しずつ手足を動かすことで、運動機能の回復を促します。また、ご家庭では以下のような対策を取り、足腰に負担をかけないようにしましょう。

・滑りやすい床には、カーペットやマットを敷く
・段差の多い場所にはスロープを設置する
・足裏の毛をこまめにカットする

こうしたご家庭でのケアだけでなく、定期的に動物病院を受診して健康状態を確認することも欠かせません椎間板ヘルニアは再発や悪化のリスクがあるため、元気そうに見えても油断せず、獣医師にチェックしてもらいましょう。

 

予防法と日常ケア


椎間板ヘルニアや脊髄損傷を防ぐには、日常生活で以下のようなポイントに注意して、足腰に負担をかけないようにすることが重要です。

体重管理
体重が増えるほど、背骨や椎間板にかかる負担が大きくなります。適切なカロリー管理や、おやつの与えすぎに注意しながら、獣医師の指導のもとで体重をコントロールしましょう。

適切な運動
運動不足は筋力低下を招き、椎間板や関節を支える力が弱まってしまいます。無理のない範囲で定期的な散歩や軽い運動を行いましょう。一方で、激しいジャンプや急な方向転換は背骨に負担がかかるため、避けるようにしてください。

生活環境の整備
フローリングなど滑りやすい床は足腰への負担が増大しやすいので、カーペットやマットを敷くなどして滑りにくくする工夫が必要です。また、ソファや階段の昇り降りは背骨に大きな衝撃を与えることがあるため、スロープの設置や抱きかかえて移動するなどの配慮を行いましょう。

 

まとめ


椎間板ヘルニアは重症化すると立てなくなるほどの麻痺を引き起こし、治療後も後遺症が残ることのある病気です。そのため、できるだけ早期に異変に気づき、早期治療を行うことが大切になります。治療の選択肢には、保存療法、手術療法、リハビリテーション、再生医療があり、症状の程度や健康状態によってうまく組み合わせる必要があります。当院では、近年注目されている再生医療(間葉系幹細胞[MSC]療法)を積極的に取り入れていますので、椎間板ヘルニアや脊髄損傷に関するお悩みや不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

<参考文献>
Intervertebral Disk Degeneration in Dogs: Consequences, Diagnosis, Treatment, and Future Directions – Jeffery – 2013 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library
ACVIM consensus statement on diagnosis and management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion – PMC (nih.gov)

 

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