「皮膚がえぐれたように見える」「ただれて、じゅくじゅくしている」「薬を塗ってもなかなか治らない」
愛犬・愛猫の皮膚にこのような変化があると、飼い主様はとても不安になると思います。見た目のインパクトが大きいため、慌ててしまうことも少なくありません。
皮膚のえぐれやただれは、引っかき傷や感染などが原因のこともありますが、なかには病気が背景に隠れている場合もあります。特に、治りにくい、広がっていく、何度も繰り返すといった場合は、表面の傷だけで判断せず、背景に病気が隠れていないか確認することが大切です。
今回は、犬や猫の皮膚がえぐれている・ただれているときに考えられる原因や、注意したい病気、受診の目安、治療の選択肢についてわかりやすくご紹介します。

■目次
1.「えぐれた傷」「ただれ」とは?
2.よくある原因
3.治らない・広がる場合に疑う病気
4.診断の流れ
5.治療の選択肢|原因に応じた治療と再生医療という考え方
6.こんなときは早めにご相談ください
7.まとめ
飼い主様が「えぐれている」「ただれている」と感じる皮膚の状態は、医療的には潰瘍(かいよう)と呼ばれることがあります。潰瘍とは、皮膚の表面だけでなく、少し深い部分まで傷ついている状態を指します。
次のような様子で気づかれることがあります。
・赤みが強い
・じゅくじゅくした傷になっている
・出血やかさぶたを繰り返している
・気にしてなめたり、触ると痛がったりする
こうした変化は、一時的な外傷でも起こります。ただし、長引く場合は皮膚の病気や腫瘍性の病気が関係していることもあります。
皮膚がえぐれたように見えたり、ただれたりする原因はひとつではありません。ここでは、比較的よくみられる原因をご紹介します。
◼︎外傷
犬や猫同士のけんかによる咬み傷、爪でひっかいた傷、どこかにこすってできた傷などです。
最初は小さな傷でも、感染を起こすと悪化し、ただれたように見えることがあります。
◼︎細菌感染・膿皮症
皮膚のバリア機能が落ちているところに細菌が増えると、赤み、膿、ただれ、かさぶたなどが出てきます。
表面だけの軽い炎症に見えても、実際には皮膚の深い部分まで炎症が及んでいることもあります。
◼︎アレルギーや慢性皮膚炎
アレルギーや慢性的な皮膚炎があると、かゆみのために自分でひっかいたり、こすったりして、皮膚が傷ついてしまうことがあります。
炎症が長引くことで、治りにくい傷のようになる場合もあります。
◼︎舐め壊し
気になる場所を何度もなめたり噛んだりすることで、傷が深くなってしまうケースです。
最初は小さな赤みでも、繰り返し刺激が加わることで、じゅくじゅくしたただれに変わることがあります。
多くの皮膚トラブルは、原因に応じた治療で改善が期待できます。
ただし、治療してもなかなか治らない、範囲が広がる、同じ場所で繰り返すといった場合は、別の病気が関係していないかを考える必要があります。
◼︎皮膚型リンパ腫
リンパ腫というと、内臓やリンパ節にできる病気を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、なかには皮膚に変化が出るタイプもあります。これを皮膚型リンパ腫といいます。
初期には皮膚炎のように見えることもあり、赤み、脱毛、かさつき、ただれなどが中心で、すぐに腫瘍と分からない場合があります。
そのため「皮膚炎だと思って治療していたけれど、なかなか改善しない」という経過で見つかることもあります。
◼︎炎症性乳がん
特に中高齢のメスの犬や猫で注意したい病気です。避妊をしていない場合や、避妊の時期によってはリスクが高くなることがあります。
この病気では、乳腺のしこりだけでなく、乳腺のまわりの皮膚に強い炎症が出ることがあります。
そのため、皮膚が赤く腫れる、熱をもつ、ただれる、えぐれたような傷になるといった変化として気づかれることもあります。
皮膚がえぐれている、ただれているときは、見た目だけで原因がはっきりしないこともあります。
そのため、状態に応じて検査を行いながら、原因を確認していきます。
診察では、皮膚の状態や広がり方を確認し、必要に応じて細胞診で炎症細胞や腫瘍細胞の有無を調べます。状態によっては、組織検査や血液検査などを行い、皮膚だけでなく全身の状態も確認します。
潰瘍やただれが長引いている場合「もう少し様子を見よう」と続けるよりも、今何が起きているのかを確認することが大切です。
原因が分かれば、治療の方向性もはっきりしやすくなります。
治療の内容は、皮膚の変化を起こしている原因によって異なります。
外傷や感染、炎症などが関係している場合は、まず原因に合わせて、感染を抑える治療、炎症やかゆみ・痛みをやわらげる治療、患部を保護する処置などを組み合わせていきます。必要に応じて、外科的な処置を検討することもあります。
一方で、皮膚型リンパ腫や炎症性乳がんなど、背景に腫瘍性の病気がある場合は、皮膚の表面だけを治療しても改善が難しいことがあります。そのような場合は、病気の種類や進行度、体力、これまでの治療経過をふまえて、治療方針を考えていきます。
状態によっては、再生医療を選択肢のひとつとして検討することがあります。
皮膚型リンパ腫などに対して、免疫細胞を活用する再生医療を検討することがあります。
CAT療法やKC療法は、いずれも再生医療の一種で、その子の状態や病気の進行度によっては、治療の選択肢になる場合があります。
CAT療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
KC療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
炎症性乳がんなどで、病態に応じて検討することがある治療法です。
その子の状態によって、ほかの治療と組み合わせながら考えることがあります。
DC療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
乳腺腫瘍について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
大切なのは「再生医療なら何でも治る」ということではありません。
再生医療はあくまで選択肢のひとつであり、病気の種類、進行度、体力、これまでの治療経過をふまえて慎重に判断する必要があります。
手術
当院では、再生医療だけを切り離して考えるのではなく、検査結果や全身状態を確認したうえで、その子に合った治療方針をご提案しています。
「今どの治療が合っているのか」を、飼い主様と一緒に整理していくことを大切にしています。
次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
・傷が1〜2週間以上治らない
・ただれた部分がどんどん広がっている
・出血や膿が続いている
・何度も同じ場所を気にしてなめている
・元気や食欲が落ちている
・しこりや腫れを伴っている
犬や猫の皮膚がえぐれている、ただれているといった変化は、外傷や感染が原因のこともありますが、なかには治りにくい皮膚の病気や腫瘍が関係している場合もあります。特に、なかなか治らない、少しずつ広がっていく、同じ場所で繰り返すといったときは、表面の傷だけでなく、その背景にある原因を確認することが大切です。
当院では、皮膚の状態を丁寧に確認しながら、必要に応じて検査を行い、その子に合った治療法を考えていきます。再生医療も選択肢のひとつではありますが、それだけに限らず、内科治療や外科治療も含めて総合的にご相談いただけます。
気になる変化が続く場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
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