犬や猫の皮膚トラブルは、飼い主様にとってとても身近で、なおかつ頭を悩ませる問題の1つです。
特にかゆみは強いストレスの原因となり、掻き壊して悪化してしまうこともよくあります。
また、治療には一般的にステロイドなどのお薬を使いますが、一時的に楽になっても薬を減らすとすぐにぶり返してしまう、あるいは長期使用による副作用が心配……という悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
こうしたときに大切なのは、なぜかゆみが続いているのかを正しく見極め(鑑別)、その子に合った治療を選ぶことです。
今回は、治らない皮膚炎、止まらないかゆみに焦点を当て、最新の皮膚科診療と、新しい選択肢である「再生医療」について、詳しく解説します。

かゆみがあると「皮膚の病気かな?」と思われるかもしれませんが、原因はひとつではありません。
たとえば、次のような原因が考えられます。
・アレルギー
花粉やハウスダストといった環境による影響のほか、食べ物に対するアレルギー反応が考えられます。
・ノミ・ダニなどの寄生虫
ノミ・ダニが活発に行動する春〜秋にかけてよくみられます。直接的な刺激だけでなく、アレルギー反応も関わっています。
・細菌・カビ(真菌)・マラセチアなどの感染
健康であれば問題にならないようなものでも、皮膚が傷ついたりすると病原体が増殖し、感染が起こりやすくなります。
・乾燥・皮膚バリア低下
季節の変化による乾燥や、不適切なシャンプーによって、皮膚の状態が変化することもあります。
・ホルモンの変化(内分泌疾患)
甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症など、ホルモンの異常が皮膚の健康に関わることもあります。
同じように見える「かゆみ」でも、原因が違えば治療方法はまったく変わります。様子見で長引かせてしまうと、治療が複雑になり、なかなか治らなくなってしまうおそれがあるため、注意が必要です。
かゆみは皮膚に現れるため気づきやすい反面、見た目(視診)だけでその原因を判断することはできません。
そのため、当院では以下のステップで鑑別診断を行います。
・皮膚の検査
皮膚掻爬試験やセロハンテープ試験などによって、細菌・カビ・ダニの有無をチェックします。
・耳の検査
耳鏡で耳の中を観察し、外耳炎がないかをチェックします。
・血液検査
全身状態を把握するだけでなく、ホルモンの異常が関与していないかを調べます。
・食事歴の確認
フードやおやつの成分を確認し、食物アレルギーの可能性を探ります。必要に応じて除去食試験を実施することもあります。
皮膚のかゆみは、ひとつの治療だけで改善するとは限りません。原因に応じて、いくつかの方法を組み合わせていきます。
・内服:かゆみや炎症を抑える薬(ステロイド、分子標的薬)、抗菌薬、抗真菌薬など
・外用:薬用シャンプー、塗り薬、保湿剤など
・生活環境の見直し:アレルゲン対策など
この中で飼い主様の関心が強いのは、ステロイドかと思います。ステロイドは即効性が高く、強いかゆみに素早く効くため、とても優れたお薬です。しかし、漫然と長い間使用していると、肝機能への負担、皮膚の菲薄化、免疫力低下による感染症の悪化などのリスクを伴います。
そのため、定期的に様子を確認しながら用量や期間を調整することが大切です。
「ステロイドを使っているのに良くならない」「かゆみがなかなか落ち着かない」と感じるときは、次のような理由も考えられます。
・原因がひとつではない(アレルギー+感染など)
・皮膚のバリア機能が低下したまま
・掻き壊しによる悪循環
・薬自体は効いているが、環境要因が改善されていない(ハウスダストによるアレルギーなど)
このような場合は、治療の組み立てを見直すことで改善につながることもあります。
「できればステロイドを減らしたい」と考える飼い主様は多いと思います。
ただし、自己判断で急に減らしたり中止したりすると、かえって悪化することがあります。
皮膚の病気は生涯にわたってコントロールが必要なケースも多く、完全にゼロにすることは現実的ではありません。それよりも、その子にとって無理のない範囲で、最小限の量でQOL(生活の質)を維持することが、治療のゴールといえます。
また、皮膚炎の治療法はステロイドだけではありません。他の治療法を組み合わせ、スキンケアの質を上げることで、ステロイドの減薬を目指す方法もあります。
なお「皮膚のかゆみがずっと続いてかわいそう」「何度も再発を繰り返す」「治療の説明に納得したい」とお考えの場合、セカンドオピニオンの検討もお勧めします。当院でも承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
「従来の治療だけではコントロールが難しい」「従来の治療では限界を感じている」そのような場合に、当院では再生医療(間葉系幹細胞療法)という選択肢をご提案することがあります。
再生医療とは、体が本来持っている回復する力や、炎症を整える力に着目した治療法です。間葉系幹細胞療法はそのひとつで、難治性の皮膚炎やアトピー性皮膚炎などでお困りの方にご検討いただくことがあります。間葉系幹細胞の働きによって、かゆみの緩和や皮膚の状態の改善が期待されます。
ただし、すべての皮膚疾患に適しているわけではなく、効果の出方にも個体差があります。そのため、事前にしっかり診察を行い、適応があるかどうかを丁寧に判断することが大切です。
また、間葉系幹細胞療法だけでよくなるとは限らず、従来治療をやめることを目標としていません。既存の治療法と併用しながら、愛犬・愛猫の負担を軽減する、お薬の量を減らす、といったことをゴールとする場合もあります。
犬や猫のかゆみや皮膚炎は、ひとつの原因だけで起こるとは限らず、いくつもの要因が関係していることもあります。
かゆそうなしぐさや皮膚の変化が見られたときは、自己判断で様子を見続けるのではなく、動物病院で検査を受け、原因を整理していくことが大切です。
また、治療ではステロイドが役立つ場面も多くありますが、長く続く場合には、副作用への配慮や再発のしやすさも含めて、治療全体を見直していくことが大切になります。
「なかなか良くならない」「治療を続けているのに繰り返す」と感じるときは、治療の組み立てを見直すタイミングかもしれません。当院ではセカンドオピニオンも随時受け付けておりますので、治療法にお悩みの際はお気軽にご相談ください。
また、状態によっては、再生医療(幹細胞治療)が選択肢のひとつになる場合もあります。
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