「後ろ足を引きずっている気がする」「立ち上がるときにふらつく」「段差を嫌がるようになった」そんな様子を見つけると、飼い主様は一気に不安になりますよね。
ネットで調べるほど「椎間板ヘルニア」という言葉が目に入り「このまま歩けなくなったらどうしよう」と心配がふくらむこともあると思います。
ただ、後ろ足の異変はヘルニアだけが原因とは限りません。関節の痛み、免疫の病気、腫瘍、血流や代謝の異常などでも、似たような歩き方になることがあります。だからこそ大切なのは「手術しかない」と決めつけたり「年齢のせいかも」と様子を見すぎたりせず、まず原因を整理することです。
今回は犬の「後ろ足を引きずる」「立てない」といった症状に注目し、その原因ごとに当院での治療のアプローチ法をご紹介します。

後ろ足の異常は、病気の進行度によって緊急性が大きく異なります。次のような変化が見られる場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
・急に立てなくなった、歩けなくなった
・足先をつねっても反応がなく、感覚が鈍いように感じる
・強い痛みがあり、動きたがらない、触ると怒る
・排尿や排便がうまくできなくなった
・短時間のうちに状態が急激に悪化している
特に、足先をつねっても反応がない場合は、神経の深い部分の感覚(深部痛覚)が失われている可能性があります。こうした症状は、進行した椎間板ヘルニアによって引き起こされているかもしれません。まずは早めに動物病院を受診して、原因を調べてもらいましょう。
考えられる原因には、次のようなものがあります。
・神経の病気:椎間板ヘルニア、変性性脊髄症、ウォブラー症候群 など
・関節・免疫の病気:関節炎、関節リウマチ、膝蓋骨脱臼、前十字靭帯断裂
・腫瘍:脊髄や骨、神経の周囲にできる腫瘍
・代謝・血流の異常:血栓塞栓症、甲状腺機能低下症、重症筋無力症 など
・外傷:転倒や事故による骨・靭帯の損傷
原因を見極めるうえで大切なのは、痛みの出方/片足か両足か/急かゆっくりか、この3点です。同じ「足を引きずる」症状でも、まったく違った病気が疑われることもあります。
「ふらついているからヘルニアだろう」と決めつけるのは、少し早計かもしれません。痛みが強く現れるヘルニアもあれば、痛みが目立ちにくいケースもあります。
実際に当院では、椎間板ヘルニアとよく似た歩き方をしていたものの、原因は関節リウマチによる痛みだったという症例も経験しています。
「様子を見よう」と受診が遅れることで、病気が進行し、回復に時間がかかってしまうこともあります。
正確な診断を受けることが、結果的に愛犬の負担を減らす近道になります。
当院では、多角的な視点での診断を心がけています。
整形(骨・関節)、神経(脳・脊髄)、内科(免疫・代謝)といった複数の視点から原因を探り「今すぐ手術が必要なのか」「手術以外で生活の質(QOL)を保てる方法があるのか」まで含めて評価します。
身体検査・神経学的検査を基本に、必要に応じてレントゲン検査や血液検査、高度画像検査を組み合わせ、診断結果と治療の選択肢をわかりやすくご説明します。
『後ろ足を引きずる・立てない』症状の原因はさまざまですが、ここではご相談が多い「椎間板ヘルニア」と「関節リウマチ」を例に、治療方針がどう決まるのかをご紹介します。
椎間板ヘルニアでは、症状の重さによって治療方針が変わります。
深部痛覚の消失など、重度の神経障害がある場合には、緊急手術が必要になることがあります。一方で、軽度〜中等度の症状や、年齢・持病などを考慮した結果、保存療法(安静管理・内服治療など)を選択するケースもあります。
関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気で、椎間板ヘルニアとは原因も治療の考え方も異なります。
炎症や痛みを抑える内服治療に加え、関節への負担を減らす生活管理やリハビリなど、長期的な視点でのケアが重要になります。
当院では、高齢や持病などで手術が難しい場合、また飼い主様が手術を望まれない場合の選択肢として、再生医療を取り入れています。
再生医療とは、動物が本来持つ回復力に着目し、炎症や組織のダメージに働きかける治療です。具体的には次のような方法があります。
・間葉系幹細胞(MSC)療法
間葉系幹細胞は動物の脂肪や骨髄組織に含まれ、炎症反応による症状を和らげたり、傷ついた組織の回復を促したりすることで、QOL(生活の質)の向上が期待できます。
「間葉系幹細胞療法」について詳しく知りたい方はこちら
・多血小板血漿(PRP)療法
血小板(傷を塞いで止血する細胞)の成長因子を利用して、傷ついた組織を修復させる効果が期待できます。
再生医療は「治すための唯一の方法」ではなく、症状を和らげ、生活の質を保つための選択肢のひとつです。ただし、すべての病気が再生医療だけで治るわけではありません。また、原因がヘルニアなのか、あるいはそれ以外の病気(関節炎など)なのか、によってもご提案内容が変わります。
まずは丁寧な診察によって原因を探り、最適な組み合わせを考えることが重要です。
後ろ足を引きずる原因は、椎間板ヘルニアだけではありません。関節リウマチや腫瘍など、さまざまな病気が関係している可能性があります。
緊急性の高いケースもあるため、自己判断で様子を見すぎず、早めの受診が大切です。
当院では、院長による的確な診断と、再生医療担当スタッフとの治療体制で、手術だけにとらわれない治療の選択肢をご提案しています。
「歩き方がいつもと違う」「後ろ足に違和感がある」そんな小さな変化でも、どうぞお気軽にご相談ください。愛犬とご家族にとって最適な道を、一緒に考えていきましょう。
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再生療法(免疫療法)
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