「耳を掃除しても、すぐに汚れる」
「耳から強いにおいがする」
「外耳炎の治療をしても、また繰り返す」
このような犬の耳のトラブルに悩む飼い主様は少なくありません。特に垂れ耳の犬や、耳の中が蒸れやすい犬では、耳垢やにおい、かゆみが出やすい傾向があります。
当院でも、耳のトラブルを抱えた犬の診察や耳の洗浄を行う機会は多くあります。しかし、耳が汚れているからといって、毎回「耳掃除をすれば解決する」というわけではありません。
外耳炎を繰り返す背景には、細菌やマラセチア、耳ダニ、アレルギー、耳の形状、耳掃除のやりすぎなど、さまざまな原因があります。大切なのは、汚れを取ることだけでなく「なぜ繰り返しているのか」という根本的な原因を突き止めることです。
今回は、犬の耳がすぐ汚れる・臭う原因、自宅ケアの注意点、動物病院での検査や治療、アトピー性皮膚炎が関係する場合の再生医療について解説します。

■目次
1.まず確認|すぐ受診したい「耳の危険サイン」
2.犬の耳の汚れ・外耳炎が繰り返す4つの原因
3.間違った「自宅での耳掃除」が裏目に出ることも
4.動物病院では何をする?
5.一般的な治療|原因に合わせて対策します
6.何度も再発するなら「アトピー性皮膚炎」の可能性も
7.アトピーが根本にある場合の選択肢|再生医療(MSC療法)
8.まとめ
耳の汚れやにおいが軽く見えても、強い痛みや耳の奥の異常がある場合は、早めの受診が必要です。
次のような様子が見られる場合は、様子を見ずに動物病院を受診してください。
・耳の周りを触ると怒る、痛がって鳴く
・耳の中が真っ赤に腫れている、出血やただれがある
・強い悪臭がする、膿のような耳だれが出ている
・頭を何度も激しく振る、頭を片側に傾けている
・歩くときにふらつく、目が細かく揺れている(眼振)
・急に聞こえにくそうにしている
特に、頭を傾ける、ふらつく、目が揺れるといった症状は、耳の奥にある中耳や内耳のトラブルが関係していることがあります。
耳の表面だけの問題ではない場合もあるため、早めに確認することが大切です。
犬の耳の汚れやにおいは、耳の入り口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起こる外耳炎によるものがほとんどです。外耳炎を長引かせる主な原因には以下のようなものがあります。
・細菌やマラセチア(カビの一種)の繁殖
耳の中で細菌やマラセチアが増殖すると、強いかゆみが出ます。特にマラセチアは、ベタベタとした黒〜茶褐色の耳垢や、独特の脂っぽいにおいを引き起こします。
・耳ダニ(ミミヒゼンダニ)の寄生
子犬を迎えたばかりの時期や、多頭飼育の環境で多く見られます。黒くカサカサした耳垢が大量に出て、激しいかゆみを伴います。
・耳の形や犬種特有の体質
垂れ耳、耳毛が多い、生まれつき耳道が狭い犬種(ダックスフンド、トイ・プードル、コッカー・スパニエルなど)は、耳の中が蒸れやすく炎症が長期化しやすい傾向があります。
・アレルギーやアトピー性皮膚炎
実は、耳は皮膚の一部です。そのため、アレルギー体質の子は、耳の皮膚にも真っ先に炎症(外耳炎)が起こりやすくなります。
愛犬の耳が汚れていると、つい綺麗にしてあげたくなるものですが、自己流の耳掃除が症状を悪化させているケースが多々あります。
・綿棒を耳の奥まで入れてガシガシこする
・人用のウェットティッシュ等で強く拭き取る
・自己判断で市販の洗浄液を何度も流し込む
耳の中の皮膚は非常にデリケートです。こうした強い刺激が続くと皮膚が傷つき、さらに炎症が長引いたり、強い痛みを引き起こしたりします。また、すでに感染や強い炎症がある状態で市販のケア用品を使い続けるのも危険です。
受診前は、無理におうちで奥まで掃除をしないでお越しください。「汚れの色や量」「においの強さ」「かゆがる頻度」などをそのまま診せていただく方が、正確な原因特定に繋がります。スマホで耳の中の写真を撮っておくのもおすすめです。
治りにくい、何度も再発する耳のトラブルに対して、まず原因を確認します。
動物病院では、耳鏡(じきょう)を使って耳の中を深く観察し、腫れや鼓膜の状態を確認します。
あわせて、採取した耳垢を顕微鏡で調べる耳垢検査を行い、細菌・マラセチア・耳ダニなどが関係していないかを調べます。
何度も再発する場合は、どの薬が効くかを調べる培養遺伝子検査や、アレルギーやアトピー性皮膚炎、内分泌疾患など、耳以外の原因を調べる場合もあります。
外耳炎の治療は、原因によって変わります。
・細菌・マラセチアが原因の場合
病院で耳洗浄を行い、奥までしっかり届く適切な点耳薬を処方します。炎症が強い場合や耳の奥まで悪化している場合は、内服薬が必要になることもあります。
・耳ダニが原因の場合
確実にダニを駆除する駆虫薬を使用します。多頭飼育の場合は、同居している犬や猫の確認や、生活環境の見直しが必要になることもあります。
・耳の形や蒸れが関係している場合
耳周りの毛を適切に管理し、耳道内の通気性を保つケアを行います。ただし、耳毛を切る処置がすべての犬に必要なわけではないため、状態に合わせて判断します。
・アレルギーが原因の場合
耳の治療だけでなく、食事療法やスキンケア、体質改善をトータルで組み立てていきます。
「薬を使うとよくなるけれど、やめるとまた悪くなる」
このような場合、アトピー性皮膚炎が関係していることがあります。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみや炎症が起こりやすくなる体質的な病気です。「耳掃除が足りないから汚れる」のではなく、皮膚全体の炎症が、耳というパーツに外耳炎として現れている状態です。
耳以外にも、足先をなめる、脇や内股をかゆがる、目の周りが赤い、季節によってかゆみが強くなるといった様子がある場合は、皮膚全体をケアしていく必要があります。
アトピー性皮膚炎についてより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
当院では、慢性的なアトピー性皮膚炎によって外耳炎を繰り返してしまう子に対して「再生医療(間葉系幹細胞療法=MSC療法)」という選択肢をご用意しています。
※細菌感染や耳ダニが原因の外耳炎には使用しません。まずは通常の耳の治療を行います。
MSC療法は、炎症を落ち着かせたり、傷んだ組織の修復を助けたりする働きが期待される治療です。
アトピー性皮膚炎が関係している場合、MSC療法によって皮膚の炎症をコントロールし、かゆみの軽減や再発頻度の低下、QOL(生活の質)の向上を目指せる可能性があります。
ただし、MSC療法を行えば必ず外耳炎が治る、薬が不要になるというわけではありません。薬、スキンケア、食事管理、耳の治療と組み合わせながら、その子に合った治療を考えていくことが大切です。
「間葉系幹細胞(MSC)療法」についてより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
犬の耳がすぐ汚れる、臭う、外耳炎を繰り返す場合、細菌やマラセチア、耳ダニ、耳の形、耳掃除のやりすぎ、アレルギーなどが関係していることがあります。
特に何度も再発する場合は、アトピー性皮膚炎など、皮膚全体の問題が隠れていることもあります。
当院では、耳の検査や治療に加えて、アトピー性皮膚炎が関係するケースでは再生医療という選択肢も含めてご相談いただけます。
繰り返す耳の汚れやにおいでお困りの際は、一度ご相談ください。
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